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思い出のおもちゃが、いつのまにか高額資産に-。近年、トレーディングカード(トレカ)やレトロゲームといった中古玩具市場が世界的に脚光を浴び取引価格が高騰、希少さゆえに億超えの価格で売買されるケースも出ている。幼少期に遊び親しんだ世代が経済力のある収集家となり投資目的の購買が活発化していることも背景にあるようだ。子供向けと思われていた玩具は今、大人も熱い視線を送る資産の性格も帯びている。
1枚4億円超え
「これまでにコレクションしたカードを合わせると、全部で1千万円以上の価値はあるはず」
人気ゲーム「ポケットモンスター」を題材にしたポケモンカード(ポケカ)を幼いころから集めている東京都江戸川区の男性会社員(24)が打ち明けた。
大学時代に本格化させた収集は、4年前のポケカブーム再燃を機に投資目的も兼ねるように。購入資金は月平均10万円ほど。コレクションの中でも最高額は1枚約100万円相当の人気ポケモン「リザードン」の初期版だ。
希少性の高いカードは世界中のファンが求め「値下がりのリスクが小さい」。米国では同種のカードが4億円超で取引されたこともある。ホログラム入りで希少価値がさらに高く、保存状態が最高レベルだったことからすさまじい取引価格となった。
男性は「趣味のポケカ集めが資産形成にもなる。コレクターとしてこれ以上の幸せはない」と、声を弾ませる。
投資の対象に
トレカ人気の背景について専門店「晴れる屋」(東京)の広報担当、藤原和磨さんは「新型コロナウイルス禍の中、在宅で楽しめる趣味として収集需要が高まった」とみる。
交流サイト(SNS)やフリーマーケットアプリの普及も個人間の取引を後押しする。中古品市場の専門紙「リサイクル通信」の調査によると、トレカを含む中古玩具・模型の国内市場規模は令和2年が1506億円で、前年比23・7%増と大幅に成長した。
トレカは再発行されなければ、市場に出回る枚数は限られ希少性が保たれる。株や仮想通貨(暗号資産)に比べ手軽に取引できるのも魅力だ。値上がりを期待して購入する投資家も増え「相場を押し上げている」(藤原さん)という。
こうした傾向は、製造が中止され入手方法が限られるレトロゲームや、ブロック玩具の「レゴ」などでもみられる。昨年7月には米国のネットオークションで任天堂が平成8年に発売したゲームソフト「スーパーマリオ64」の未開封品が1億7千万円で落札された。
税トラブルに注意
収集にあたっては、現物資産として盗難などの被害に注意を払うことはもちろんのこと、取引の利益が課税対象となるかについての確認も必要だ。
ネットオークションに詳しい広島総合法律会計事務所の田中幸治税理士によると、中古玩具の取引で得た利益は、一般的に1つあたり30万円以上の価格で売却した場合、貴金属や宝石などの高級品の取引と同様、譲渡所得に該当する。30万円を超えない場合でも、継続して売買すれば雑所得とみなされるケースもあり、場合によっては確定申告の必要が生じる。
同じ商品の取引でも、その額や頻度によって課税対象となるかどうか国税当局が個別に検討することになるため、田中税理士は「トラブルにならないためにも不安があれば税理士に相談してほしい」としている。
筆者:桑村大(産経新聞)